こんにちは。石井久美子バレエプロジェクトのつっちーです。
師走の候。12月は駆け足で過ぎていきますが冬本番のはじまりですね。クリスマスに忘年会とイベントも目白押しの季節。体調(体重?)管理にはくれぐれも気をつけてくださいね。
さて、今回のballet project通信#13は『久美子のロシア探訪記 (前編)』です。11月にロシアを訪れた久美子が感得したものとは。それでは久美子と一緒に寒冷のサンクトペテルブルクの街を訪れてみましょう。
ロシアの地を踏む

「飛行機を降りてロシアに降り立った時、久しぶりという気持ちは不思議となくて、本来いるべき場所に私は戻ってきたんだなって。故郷に帰ってきたような感覚。ロシアの空気も匂いも私には自然で、ロシアは自分らしくいられる場所だと感じました」
2024年。11月某日。
久美子はサンクトペテルブルクを訪れていました。ロシアに足を踏み入れるのは実に4年ぶりです。今回の旅の目的はマリインスキー劇場でバレエを鑑賞すること。願わくば、新しく就任されたマリインスキーの芸術監督にお逢いし、自分の存在を認知してもらえるよう挨拶がしたいと考えていました。
社会情勢も危ぶまれる中、なぜ今、ロシアへの旅を決意したのでしょうか。
「ロシアでコロナに罹患した時、今まで培ってきたものがすべて消え去ってしまうのではないかと、震える夜もありました。手のひらからするするとこぼれ落ちていく砂のように、ワガノワやマリインスキーでの経験が、私からなくなってしまうんじゃないかって。ロシアに残りたかったけど、あの時は帰国せざるを得ない状況でした」
苦渋の決断で日本に帰国した久美子はコロナの治療に専念します。
「私なりにタイムリミットをつけて治療に専念してきました。起き上がることさえできなかった時期は、昔の自分に戻るという強い意思で心を奮い立たせていました。日本でバレエ教師として活動していく中で、ようやく自分の体に戻りつつあると感じられるようになり、今は一年後にマリインスキーに戻れるのではないかという、希望の一筋が見えています。
マリインスキーの舞台に立つ自分の姿がイメージできるようになった今、ロシアへの郷愁がどんどん深まりました。その気持ちが冷めないうちに、私はロシアに行かなければって。そんな想いを胸にやってきました」
壮麗なマリインスキー劇場にて

ロシア革命の中心地であった古都サンクトペテルブルク。バルト海に面したこの街は今もなおロシアの文化や芸術が栄える街です。
サンクトペテルブルクを歩くと、はじめてロシアにやってきた十代の頃が思い出されてきます。期待と不安を胸に飛び込んだワガノワ時代、そしてマリインスキーでの懐かしい日々が頭の中を走馬灯のように駆け巡ります。
サンクトペテルブルクの風が頬を撫でるたびに、ボルシチの温かさもはっきりと思い出せたし、美しい街並みがどんどん広がっていくように、久美子の心も開放されていきます。
遠くにマリインスキー劇場が見えてきます。ユネスコの世界遺産にも登録されている美しくも荘厳な建造物です。

マリインスキーの舞台と舞台裏

「マリインスキー劇場の客席から舞台を眺めた時、言葉では表現できないほどの感動が込み上げてきました。胸がぎゅっと締め付けられるような甘酸っぱい気持ち。無意識のうちに封じ込めていたマリインスキーに対する慕情が溢れ出てきて、ああ、私はここにいて、ここで踊っていたんだなって。
今回、運よく通行証を発行してもらえることになり、マリインスキー劇場の舞台裏まで入らせて頂きました。本来なら叶うことではないので、私のために尽力してくださったマリインスキーの方には感謝の気持ちしかありません」
舞台裏は、リハーサルから本番まで、公演のあらゆる場面で緊張が走る場所です。衣装の着替え、大道具・小道具の運搬・照明の調整など、慌ただしい世界がそこにはあります。
「舞台裏の風景は、私をマリインスキー時代へと連れ戻してくれました。舞台裏で動くダンサーや関係者たちを見ていると、当時のことがもっとリアルにフラッシュバックしました。舞台で踊ることだけがバレリーナではないということ、多くの方たちの働きにより舞台の幕は開かれるということを、この舞台裏で学びました。」
久美子の決意
「舞台裏にいると、焦りと気が引き締まる思いでいっぱいになりました。今、私が日本でやってきていることを削らなければいけない時がきたんだなって。トップのバレリーナが本番に向けて、裏であれこれ動くのを見ていると、私は必ずここに戻る…戻らなければいけないんだって気持ちがより一層強くなりました。
客席から舞台だけ眺めても、ここまで生々しく感じられなかったと思うので、舞台裏まで入れたことは刺激的で運が良かったとしかいいようがないです」
久美子は予測不能な舞台裏の風景を見つめて決意をします。マリインスキーに必ず戻るということを。
その時です。
マリインスキーの芸術監督アンドリアン・ファデーエフの姿が、久美子の目に映りました。久美子の足は自ずとファデーエフに向かいます。そして、ファデーエフに声をかけました。
「久美子です。あなたに会いに日本からきました」
後編へ続くー
ファデーエフに挨拶した久美子は、想いを伝えることはできるのでしょうか。今年最後の配信となる次回のballet project通信#14(後編)も乞うご期待です。本日もお忙しい中、最後までお読みくださりありがとうございます。