ballet project通信

【#021】久美子と行く新国立劇場バレエ「ジゼル」


ballet project通信では、石井久美子バレエプロジェクトの裏側やバレリーナ石井久美子の素顔、驚くハプニングや笑える話、感心してしまう話、泣ける話などなど、みなさんと共有したい話題を、密度高く発信していきます。余暇のお供に気軽に楽しんで頂けたら嬉しく思います。

皆さん、こんにちは。石井久美子バレエプロジェクトのつっちーです。新年度の慌ただしさもようやく落ち着きを取り戻した頃でしょうか。GWも始まりましたが、お出かけの予定はありますか。お休みの方もそうではない方もあと少し頑張っていきましょうね。

さて、今回のballet project通信#21は『久美子と行く新国立劇場バレエ「ジゼル」』です。
石井久美子バレエプロジェクトでは久美子とバレエ学校の生徒さんと一緒に、新国立劇場バレエ団による『ジゼル』を鑑賞する会を開きました。

そんな贅沢な会に、なんと私も同行させて頂けることになりましたので、『ジゼル』の舞台と鑑賞会の様子を皆さまへお届けできたらと思います。それでは、一緒に新国立劇場の扉を開いてみましょう。


観客席から・中濱瑛先生

ロマンティック・バレエの頂点『ジゼル』

2025年4月20日。
新国立劇場バレエ団による『ジゼル』の千秋楽です。そして、久美子とバレエを愛する生徒さんが一緒に鑑賞する特別な日。

新国立劇場バレエ団は2020年に吉田都舞踊芸術監督を迎えました。就任されて初の演出を手掛けたのが『ジゼル』です。2025年4月に新国立劇場で再上演されるとのことで、この企画が進みました。
私たちが鑑賞した前日に、なんと天皇陛下もご鑑賞された注目の舞台です。7月にはイギリスのロイヤルオペラハウスで海外公演を予定しているそうです。
ロマンティックバレエの不朽の名作『ジゼル』は、バレエ好きにとって特別な作品のひとつです。愛と死と赦しをテーマにした、儚くも美しい物語です。

第一幕

秋の収穫祭に沸く小さな村。恋する娘、ジゼル。アルブレヒトの秘密。不器用で実直なヒラリオン。ジゼルの物語は、解説しなくともきっと皆さんよくご存じですよね。自由に解釈ができるストーリーともいえますが、皆さんは誰に感情移入してしまうことが多いでしょうか。

第一幕は、気付いたら口元をほころばせながら鑑賞してしまいます。ジゼルの純粋さ、恋する心の高鳴りが伝わってきて、この後の悲劇が予想できないほど幸せいっぱいな気持ちになれます。
約10年ぶりに舞台で鑑賞した『ジゼル』でしたが、舞台美術の美しさに目を見張りました。
白樺の木々が生い茂り収穫の頃の村のぬくもりが見事に表現されていて、幕が開くのと同時に、ジゼルたちが暮らす村へ訪れたような感覚を覚えます。

バレエファンの中では傲慢で酷い男扱いされることが多いアルブレヒトですが、実は私、彼のことを悪い男とは思えないのです。
若くて生命力が漲るアルブレヒトにとって、貴族の暮らしは縛りだらけで退屈だったかもしれない。だけど村は輝きと活気に溢れていて、アルブレヒトはこの村で過ごす時間だけは自由に心を解放できていたことでしょう。
結果的にジゼルを最後まで騙し、あまりにも愚かな行動で悲劇を生んでしまいましたが、心から自分を愛してくれる純粋なジゼルを前に、残酷な真実を打ち明けることはできなかったのではないでしょうか。それもアルブレヒトの優しさであったのではないかと思わずにはいられません。
第一幕の見どころは、ジゼルのバリエーションやアルブレヒトとのパ・ド・ドゥではありますが、直塚美穂さんのペザントパ・ド・ドウならではの愛らしいかろやかな踊りも素晴らしく、会場を大きな拍手で包みました。

第二幕

ぼんやりと霧の中に浮かぶ月。幻想的な森の中の墓地です。
第一幕に続き、舞台美術の荘厳さに一気に惹きこまれました。帰宅してから調べてみると、リトアニアの「十字架の丘」に着想を得たとのことでした。

リトアニア「十字架の丘」

十字架が織りなすキリスト教の敬虔さ、神秘性が漂う重厚感のある空間で、私もウィリたちによって、死後の世界にひきこまれてしまうのではないかと思ってしまったほど。
ジゼルはこの世を去り、精霊ウィリとして登場します。
なぜ、白装束がこんなにも美しく見えるのか。もちろん衣装の素晴らしさでありますが、指先からつま先まで芸術品のようなバレリーナの姿かたちの美しさが、生み出しているものではないかと感じます。
女王ミルタの高尚な怒り、ヒラリオンが葬られる場面はその迫力に背筋がぞっとします。
そして『ジゼル』の最大の見どころとも言える、ウィリたちが夜の森で踊る一糸乱れぬコールドはやはり圧巻で、拍手が巻き起こります。この世界には存在し得ない憂い。私の言葉では表現できないほど素晴らしかったです。
ウィリたちの怒りと哀しみ。アルブレヒトの後悔と慟哭。ジゼルへの深い真実の愛。
そして愛する人への赦し。

気づけば私の目にはうっすらと涙が浮かんでいました。
鳴りやまない大きな拍手とカーテンコール。巻き起こるスタンディングオベーション。舞台を観に行くことの醍醐味を、最後の瞬間まで存分に味合わせていただきました。

瑛先生と石井久美子

開演前、終演後と劇場のロビーでの光景です。多くの来場者が久美子にこう声をかけていました。
「石井久美子さんですか?」
「写真、一緒に撮ってもらってもいいですか?」

その呼びかけに、 久美子は笑顔で快く写真撮影に応じます。
久美子がファンに囲まれている様子を目撃するのは初めての経験だったので、 その姿を見て感激しました。

こうしてお仕事を一緒にさせてもらえていること。このような場に私もいられたこと。心の奥から感謝の気持ちと誇らしい気持ちでいっぱいになりました。
そして、そんな久美子の生徒さんたちと一緒に『ジゼル』を鑑賞できたこと。バレエの素晴らしさと感動を分かち合えたこと。一日すべてが私にとっては舞台のようでした。

素晴らしい舞台を見せてくださった新国立劇場バレエ団の方々、そして一緒に鑑賞したすべてのバレエ好きの方たちへたくさんの感謝を伝えたいです。本当にありがとうございました。