ballet project通信

【#025】光藍社子役オーディション


ballet project通信では、石井久美子バレエプロジェクトの裏側やバレリーナ石井久美子の素顔、驚くハプニングや笑える話、感心してしまう話、泣ける話などなど、みなさんと共有したい話題を、密度高く発信していきます。余暇のお供に気軽に楽しんで頂けたら嬉しく思います。

こんにちは。石井久美子バレエプロジェクトのつっちーです。もうすぐ七夕ですが、皆さんは短冊に願いを込めましたか。織姫と彦星が一年に一度だけ出会えるドラマチックな夜に、輝やく天の川が見られたらいいですね。

さて、今回のballet project通信#25では、光藍社が主催する「ウクライナ国立バレエ スペシャル・セレクション2025」東京公演の子役オーディションの様子をお届けします。皆さんもぜひ、オーディションの雰囲気を感じ取ってくださいね。



ウクライナ国立バレエセクション2025

2025年7・8月にかけて、今年もウクライナ国立バレエが来日し、クラシックバレエの人気作品をハイライトで披露するガラ公演を上演することになりました。
光藍社は、主に海外で活躍する一流の劇場・団体を招聘し、日本全国でバレエやオペラ、クラシックコンサートなどの公演を主催しております。

そんな光藍社から、8月9日(土)・11日(祝・月)「ラ・バヤデール」第二幕・東京公演での子役を、石井久美子バレエプロジェクトでキャスティングして頂きたいとの依頼を受け、オーディションを開催する運びとなりました。

子役オーディションを開催するのは初めてのことですが、新しいことへチャレンジすることを成長の糧にしている私たちにとっては、またとない機会です。

オーディションに挑む子たちがベストな状態で力を発揮できるよう、細やかな配慮(休憩や水飲みのタイミングなど)も大切にしながら準備を進めます。また、久美子が小学生の頃からお世話になっている、経験豊富なバレエピアニストの方もお呼びし、振付に合わせて演奏して頂くことになりました。

プロジェクトのちより先生は小学生の頃に、なんとマリインスキーの日本公演「ラ・バヤデール」の子役で舞台に出演しています。その時の話を聞いてみました。

「実は私は、オーディションで役を勝ち取ったわけではなく、先生に声をかけて頂き出演することになりました。印象に残っているのは、ロシアでトップといわれるプロのダンサーたちを袖から見られたことです。舞台上の姿は客席からでも見ることができますが、袖でどんな準備をしているのかを見られるのは、出演者だけの特権なんです。

プロのダンサーたちが袖でどんなふうに集中して待機しているか、どんなルーティンで出番を迎えているのか、ずっと観察していました。日本のバレエ団で子役の経験もありましたが、マリインスキーのダンサーたちの袖での過ごし方はまったく違っていて、とても印象深かったです。」

海外のプロのダンサーたちと、同じ舞台に立てる機会はなかなかありません。また、ちより先生は「オーディションを楽しんでキラキラしてね」と、エールを送っています。オーディションに挑むすべての少女たちが、輝ける場所でありますように。


子役オーディション

「みんなの踊りたいって気持ちが伝わりすぎて、中盤ぐらいからグッときてしまいました。オーディションをする側と受ける側とどっちが辛いんだろうって」
(※久美子の言葉)

2025年5月24日。
光藍社主催の「ウクライナ国立バレエ スペシャル・セレクション2025」 東京公演の子役オーディションに、書類審査を通過した30人の少女たちが挑みます。

今回開催される子役オーディションは「ラ・バヤデール」第2幕より「壺の踊り」マヌーと二人の少女のキャストです。さらにフィナーレではコーダも踊ります。選ばれるのはファーストキャスト2名+アンダーキャスト(代役)の2名です。

ここでちょっとプチ知識。皆さん、バヤデールの壺の踊り(子役)がどんな踊りかご存じですか。
華やかな結婚式の日に、マヌーが捧げものとして壺の中に貴重なお水を入れてきます。ふたりの少女は「そのお水を私にちょうだい」とおねだりするのです。でもお姉さんは「ダメダメ」と、そんなストーリー性のある愛らしい踊りです。
バレエのテクニックはもちろんのこと、演技力も必要となってきます。

さて、会場では受付を終えた子から順に、黒いレオタード姿となってパーテーションの向こう側から現れます。少女たちからは静かな緊張感が漂っています。

その時、ハッと目をひく子がいました。スラリと手足が長く、ストレッチする姿さえも美しい。しばらく目で追ってしまいましたが、どんな踊りを見せてくれるのかひそかに注目したいと思います。

「今日はみんなの華とか、どういうダンサーなのかを見たいです。みんなの輝いている姿を見せてください」

久美子の声を皮切りに、子役オーディションの幕が開けました。
瑛先生とこっちゃん先生が前に立ち、ピアノの生演奏に合わせて本番を想定した振付を教えていきます。

普段、私はオフィスで仕事をする両先生と会うことがほとんどですが、その日はトゥシューズを履いて踊っている姿を、初めて直に観ることができました。先生たちのマイムは、ふわりと会場を優しく包み込むようで、今この瞬間を見ていられることが、なんて貴重で幸せな時間なのだろうと感じました。(見惚れるほど可愛かった)

先生はマイムの意味を説明し、時間をかけながら丁寧に指導していきます。少女たちは真剣な表情で、先生の踊りを真似て体現していきます。

会場にはピアニストの指先から奏でられる、かろやかなピアノの音色が響き渡ります。生演奏ならではの息遣いと揺らぎが、少女たちを優しく導いていくようです。ピアノとバレエが織りなす空間は、まるでひとつの芸術作品を観ているようで、ここが後に結果を伴う場所になるということを忘れてしまうほどでした。

絵画のようなオーディション風景

久美子の指導

少女たちは真剣な表情で、振付の確認を取りながら覚えていきます。
時が過ぎるにつれて、バレエのテクニックが高い子、華のある子、表現力の高い子、堂々と踊れる子、アピールしていく力のある子と、個々の違いが浮き彫りになります。
途中で具合が悪くなってしまう子もいました。じっとりとした重圧がのしかかる過酷な時間でもあります。

久美子も席を立ち、指導に入ります。子どもたちはこれから大切な言葉を頂けるということを本能で感じ取るのでしょう。目の光が変わります。

「音楽とマイムを繋げて。顎でも演技をして。楽しく、そのお水ちょうだいって。キラキラの笑顔で」

「バレリーナの首のライン綺麗に見せて」
「何が大切だった?そう、側屈。脇を縮めて」

「バーランセ、バーランセ」

久美子がお手本を見せながら指導をすると、子どもたちの動きがまたひとつ彩をもちはじめます。

少女たちの中に入り指導にあたる久美子

ペア審査

ティーチングタイムが終わると、覚えた振りを2人1組(ペア)で踊る審査を進めていきます。ペアでスポットを当て、どんなダンサーなのかをじっくり見ていく時間です。

5番と6番のペア

少女たちは踊る前に意気込みや、自分の得意なことなどをアピールしてから踊り始めます。

「表現するのが大好きで得意なので、それを武器にして頑張りたいです」

次々と踊っていく少女たち。久美子や先生の視線はふたりだけに注がれます。少女たちは自分の順番の時以外にも、確認をとるように会場の隅で踊っていて、そんな一生懸命な姿を観ていると、全員に合格をあげたい気持ちにかられます。

すべてのペアが踊り終えたところで、久美子がこう言いました。

「私が組んでみて欲しいペアがいるので、踊ってみてください」

ペア替えをして、もう一度前で踊る子の番号が呼ばれます。久美子はペア替え審査についてこう語っています。

「もう1回、この子の踊りを観たいなとか。この子とこの子を掛け合わせるとどうなるのかな?とか、選出した子の中で実力的なところを比べるためにとか」

私がひそかに注目していた子も、ここで呼ばれていました。少女たちの本気が伝わってきます。呼ばれなかった子たちの表情が曇り出すのを感じましたが、バレエの世界は時に残酷です。

審査結果

別室にてオーディションの審査会議が始まります。
この時間に少女たちはストレッチをしていきます。ピアノの生演奏に合わせてストレッチ、なんて優雅で贅沢な時間なのでしょう。ストレッチ後に自分の体がどのように変化するのかも見ていきます。

ドゥバンに脚上げするこっちゃん先生

審査を終えた後に、石井久美子バレエプロジェクトの代表である菜々子(久美子の妹)が挨拶をしました。

「子役オーディションの開催ははじめてのことでしたが、皆さまのおかげで開催することができました。今回はこうして結果が出てしまいましたが、たくさんの才能を感じることができて嬉しかったです。このまま突き進んで頂きたいと思います」

そして、久美子の言葉です。

「オーディションは私も受けたことがあるけど、だけど結果なんて出したことがなかった。私も遅咲きだった。オーディションでひっかかったこともない。人それぞれ成長のスピードは違うし、後から花咲く子もたくさんいる。だから、今回の結果で自分に自信をなくしてほしくない。
辛いこともあるかもしれないけど、楽しくみんなには終わってほしい。」

遅咲きだったという久美子の言葉が、少女たちの胸に深く突き刺さります。

合格者の言葉、そしてリハーサルへ

駆け足ではございますが、子役オーディションの様子を一部紹介させて頂きました。会場の雰囲気を感じ取ることはできましたでしょうか。
(※オーディション結果は、今後配信されるYouTubeなどでご覧頂ければと思います。)


最後に、子役オーディションに合格した少女たちの言葉を、一部抜粋して紹介させて頂きます。
「嬉しい気持ちもあるけど、いろんな人に支えられて合格できたので安心した気持ちでした。本番に立てるように、今回オーディションに来てくれた子たちの気持ちも背負って、頑張ります」

「来る前から、お母さんと楽しもうと話していました。楽しめたから、合格を頂けたのではないかなと。合格を聞くまでは、心臓の音が自分でも聞こえるぐらい緊張していました。自分ができる精一杯を練習でも発揮していきたい。」

只今、本番に向けてリハーサルが行われています。
久美子は時に厳しい言葉で指導しますが、オーディションを勝ち進んだ少女たちは真剣な表情で久美子の言葉に耳を傾けています。舞台に立つためには誰よりも頑張らねばなりません。

本番まであと1か月。本気でバレエと向き合う、熱情の夏のはじまりです。